社会人で「品質」という言葉を聞かない人はいないでしょう。「製品の品質」、「業務の品質」、「サービス品質」など「品質」に関する情報は日常にあふれています。ここでは品質の一般的な定義と、特に製造業における品質向上のための基本的な考え方について述べ、最後にITを活用した、これからの品質維持・向上手法を紹介します。

品質とは?

品質とは、ISO9000で「本来備わっている特性の集まりが要求事項を満たす程度」と定義されています。つまり、仕事内容の質のこと。そして、製造業に限らず、サービス業や販売業などでも品質の考え方が重要です。

品質はいくつかの種類があります。

  • 製品の品質:製造品質(出来ばえの品質)と設計品質(狙った品質)
  • 業務の品質:(仕事の質:生産性や効率も含む)
  • サービスの品質:(顧客にどれだけ満足してもらえたか)

設計品質が高くても、生産ラインの製造品質が低ければ最終的には品質の低いものしかできません。生産ラインの製造品質が設計品質についていけないということです。しかし、設計品質の低いものを製造品質の高い生産ラインに投入しても無駄になります。設計品質は顧客満足を実現する必要があるので、常に高くなり続けます。したがって、生産ラインの製造品質も常に高く維持されるのが理想ということになります。

製造品質の指標(生産ラインの能力)は加工精度や、スループット、歩留まりなどで表されますが、製造品質は設計品質を実現するためにあるので、究極の品質の指標は顧客の満足度ということになります。したがって、営業や保守などの部門でも品質の考え方が重要になってきます。

また、業務の品質は顧客満足度だけでなく、「ブラック企業」の問題や、「時短」、「働き方改革」などのキーワードで表されるような、働いている従業員や職員の満足度(従業員満足度)と両立させることも近年では大切になってきています。

製造業における品質向上の考え方

製造業における古典的な品質管理の考え方にTQM(Total Quality Management)があります。TQMは「経営や製品のレベルを向上させることを全社的に行う取り組み」のこと。TQMの原則としては「目的に関する原則」「手段に関する原則」「組織の運営に関する原則」があります。

また、データのグラフ化や図表を用いて情報を整理して「見える化」するところが特徴です。なお、前者をQC七つ道具(ヒストグラムやパレート図など)、後者を新QC七つ道具(アローダイアグラム法や親和図法など)と呼んでいます。

以下ではTQMの各原則について見ていきましょう。

目的に関する原則

「後工程はお客様」「マーケットイン」「品質第一」がキーワードになります。上記で述べたとおり、究極の品質の指標は「顧客満足度」なので、顧客(市場)のニーズを取り込んだ製品をつくれば、品質が向上します。また不良品を少なくすれば、製品の評判は良くなりこれも品質が向上します。生産部門は顧客の顔が見えにくく、ただ物をつくれば良いという気持ちになりやすいので、仕事の目的をはっきりさせるための原則と言えるでしょう。

手段に関する原則

たとえば、「作業の標準化」で作業を安定化させ、問題が発生した場合には「PDCAサイクル」を回して原因を探し、「再発防止」を図ります。つまり、標準化された作業から外れた作業によって不良が発生していると考えられるので、そうした作業がどこで発生しているかをPDCAサイクルによって発見して、その作業を標準化されたものに戻せば不良の発生は抑えられるということになります。

「作業の標準化」とは具体的には「マニュアル化」「自動化」を指します。要は、複雑な作業を分割化・単純化して、ミスやエラーを少なくするということです。また、分割・単純化しておけば、問題が発生したときの発見・分析・対応を迅速に行うことができます。

「PDCAサイクル」とは、P:Plan(計画)、D:Do(実行)、C:Check(検証)A:Action(行動)の略で、TQMを実現するための具体的な行動指針となります。まずは計画を立て、実行してみる、さらに実行の結果を検証し、検証結果に基づいて行動するということです。そして、これらのサイクルを日常的に回し続けるということが大切になってきます。最終的には、従業員一人ひとりの日常の行動が、無意識の内に「PDCAサイクル」に基づいて行われるようになるのが理想です。

組織の運営に関する原則

「リーダーシップ」「全員参加」「教育の重視」「人間性尊重」などがキーワードとなります。この原則は主に管理職や経営層向けの原則となります。管理職は「リーダーシップ」を発揮して「全員参加」のTQMを推進することが必要です。「全員参加」がなぜ必要かと言うと、ひとりだけ作業品質の低い作業員がいると、工程全体の品質がそこに引っ張られてしまうからです。

つまり、良い作業をする作業員とは、優れた作業上の個性を持つことよりも、実際の作業で「決められたことを、間違いなくこなす」作業員と言えます。しかし、その人の人間性まで否定してしまうのは問題です。そこで「人間性尊重」が重要となります。そして、そのような作業員でも見捨てずに「教育」を行い、少しでも標準に近づけるように努力させる必要があるのです。

ITを活用したTQM活動の効率化の手法

TQMではグラフ化や図表化によって情報を整理するので、データを生産ラインからピックアップする必要があります。これはエッジコンピューティングで自動化が可能です。また、少なくともグラフ化による情報の整理はコンピュータに任せてしまえば、人間は分析・意思決定に専念することができます。

また、TQMにおいては、データから得られた情報から原因を推定する過程では、人間の推論が必要になります。今まではブレインストーミングのような手法でこの推論を行っていましたが、ここに人工知能を活用することが可能になりつつあります。

これらの作業をIT化することによって、今までは抜き取り検査で間欠的に行っていたものが、ほぼリアルタイムで連続的に行うことができるようになります。もっと進化すると、製品のデータが標準値を超えると自動的に警報を発し、さらには原因の推論と推論結果の表示までを自動で行うことが可能になるかもしれません。こうなると、人間は、推論結果の確認と対応を行えばいいだけになると考えられます。つまり、品質の維持向上と省力化を両立することができるようになるでしょう。

これからの品質向上にはITの活用が欠かせない

以上、製造業における品質向上活動について述べてきました。これからの品質維持・向上活動は、基本的にはいままでのTQMの延長上にあると考えられます。しかし、ITをもっと活用した、まったく新しい品質維持・向上活動の手法が登場するかもしれません。いずれにしても人手不足のなかでも、製造業の品質維持・向上活動はIT機器の発達によって大きく進化することは間違いないでしょう。

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