学習指導要領の改訂や大学入試における英語試験の変更など様々な議論が進められていますが、英語教育については気になるところです。ところで、骨太な英語力は「読む力」から培われるという意見もあります。今や様々なシーンで世界各国の人とのコミュニケーションは不可欠ですが、そのために必要な骨太な英語力を身に着けるためには?

使える英語力はどのように身につくのだろう

新しい学習指導要領に基づく英語教育が2020年度から始まるようです。小学校では成績はつけませんが、3・4年生から英語に取組むようです。5年生からは専門教員を活用して、教科として初歩的な英語の運用能力を養うようです。中学になると授業自体を英語で進めることを原則とし、ニュース記事について自分の意見を発表したり、仲間の意見を聞いたりする授業が予定されています。高校に入りますと、英語話者とある程度流暢にやり取りできる能力を養います。英語で授業が進められるだけでなく、ディベートやプレゼンテーションなども授業に取り入れられるようです。

昨年11月に国会での議論のあとで、大幅に延期することが決まったのが、大学入学共通テストにおける英語科目を民間試験にゆだねるという改革です。高校の授業を大胆に変えるには、大学入試を変えなければ効果があがらないという観点から検討されたようです。推進派の中には、英語を社内公用語とした企業の社長をはじめ、「学校教育は仕事では使えない」と批判する経営者がいたようです。一方で審議会の初期段階では英語の教育者が含まれていなかったことも指摘されています。

報道されたように、受験生の地域格差や経済格差を是正する施策も具体性はなく、実施上の課題を抱えたままであり、延期という結論に至ったことは当然であると考えます。決定プロセスや実施上の課題に関しては、あくまでも報道で知った範囲ですので、これ以上詳しく言及することはしませんが、英語教育の考え方について自分自身の経験を踏まえて述べたいと思います。

音楽や小説で英語を学んだ学生時代

私が10代のころは、英語で会話する機会などは全くなく、とにかく読んで暗記するだけの勉強でした。中学の時にはとにかく教科書を丸暗記。そして基本的な文法の学習を進めます。かなり怪しい発音の先生の音読を聞いて、我々は覚えた文章をそのまま発声するだけです。40年以上前の、東京の下町の区立中学校での英語教育です。都立高校に入りますと、英語のレベルは上がりますが、基本的に同じことの繰り返しです。文章全体は流石に暗記しませんが、教科書や副教材の少し長い文章を読んで、読解の練習と単語・熟語の暗記です。大学受験時期にはまとめて単語や熟語の暗記をします。あとは入試の過去問題に少し挑んで時間切れです。高校時代もヒアリングの勉強はほとんどしませんでした。しかし、個人的に洋楽を聴きました。ビートルズやサイモン&ガーファンクル、そしてカーペンターズなどです。歌詞カードを見ながら何度も聞いた記憶があります。

大学生になると、教養で英語の授業はありましたが、内容は記憶にありません。また、専門で原書講読の機会はありましたが、自分の分担部分だけを読んでいたのではないかと思います。一方で、海外小説は原書で読むようになりました。大学受験時に勉強した程度の英語レベルで、無茶をして徹夜したら1冊の半分ぐらいがいっぺんに読めたのがきっかけです。辞書をまったく引かなかったので、細かい描写では分からない部分がありましたが、読み切ることが優先でした。シドニー・シェルダンとディック・フランシスが当時読んだ作家です。

骨太な英語力は「読む力」から

縁があって外資系IT企業に就職して30年以上の間、仕事の中で毎日のように英語に接しています。平日には必ず英語の文章を読んだり、書いたりしています。電話会議も毎週何度かあります。定期的に数日間の海外出張をしますので、英語でプレゼンテ―ションをして、ディスカッションに参加します。しかし、英語の達人であるかというと、そんなことはありません。仕事で困ることはあまりなくなりましたが、それ以外の場面では大いに不自由します。ハリウッド映画を観ていても、サブタイトルの日本語があると見てしまいます。英語の歌詞は、若いころ聞いたものは今でも概ね聞き取れますが、新しい歌手のものはあまり聞き取れません。TV番組もニュースはかなり聞き取れますが、深夜のトーク番組などでは聞き取れないことがあります。

「コミュニケーションは会話」の発想は誤りであると、立教大学名誉教授の鳥飼玖美子さんが言っています。さらに、英語を使うために必要な語彙や文法は「読むことに」によって培われるとも言っています。「読む力」が基礎になって、「聞くこと」や「書くこと」ができるようになり、その力を使って「話すこと」や「やりとり」が可能になります。簡単な買い物などの会話でしたら定型表現でよいですが、自分の意見や考えを論理的に説得力をもって話すためには、骨太の英語力がもとめられるとのことです。読めない、書けないでは内容のあるコミュニケーションはおぼつきません。私は自分自身の英語力が骨太かというと、大いに不安ですが、鳥飼名誉教授の意見には100%賛成です。

世界を広げる「英語力」

ところで、昨今の中学生は、ニュース記事に対して日本語では意見を発表できるのでしょうか。高校では、本当に英語でディベートやプレゼンテーションをするのですか?これも、日本語でディベートやプレゼンテーションできる能力をつけるほうが先でしょう。英語に関しては、読む力が基礎になって、書くことがある程度できるようになれば、そこから先は必要に応じて技能が身につくというのが持論です。英語を母国語とするひと、公用語が英語である国のひと、そして外国語として英語の使うひとを合計すると15億人とも20億人とも言われています。また、学術・ビジネス・スポーツの公用語はほぼ英語であることも事実です。子供たちの将来の可能性を広げるという意味で、英語教育はますます重要であり、骨太の英語力を養成することが期待されます。

先ほど触れました、ストラタスにおける定期的な海外出張の場では、米国人はもちろんのこと、フランス人、インド人、英国人、ドイツ人、シンガポール人、オランダ人などとコミュニケーションをしてきました。これからも、日本以外の地域のベストプラクティスを学ぶとともに、日本からも大いに発信したいと考えます。骨太な英語力を身につけた若い皆さんにも、ぜひこのような国際的なビジネスの場に参加いただきたいと思います。

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