団体スポーツのプロリーグ化について少し考えてみました。きっかけは日本ラグビー協会の副会長に就任した清宮氏が明らかにしたプロリーグの構想と、7月30日付で発表されたメルカリによるサッカーJ1鹿島アントラーズの子会社化のニュースです。

TBSで日曜の夜9時に放送されています、“ノーサイド・ゲーム”をご覧になりましたでしょうか。ラグビー好きの人は、池井戸潤氏の原作小説を読まれたかもしれません。自動車会社の実業団チームが存続の危機に直面し、本社企画部門から左遷されてきたラグビー未経験の部長と一緒に、チームの強化を図るストーリーです。池井戸さんの小説ですので、企業内や相手チームに悪役も登場し、試練の連続となっています。

日本では長く学生スポーツと、その延長線上で企業が主体となる実業団スポーツが中心でした。つまり、選手の競技活動を金銭授受の対象としないアマチュアスポーツです。野球では企業名チームの社会人野球とプロ野球は別々のリーグであり、公式戦をすることはありません。サッカーでは天皇杯などのトーナメントで、アマチュアチームとプロチームが試合をしますが、Jリーグのチームは実業団ではなく明確にプロチームです。ラグビーの国内最高峰のリーグであるトップリーグは、中途半端な状態であり、社員として働きながらプレイをしているアマチュア選手とプロ契約の選手が混在しています。企業が主体になっている実業団チームに、プロ契約の選手が何人か入っているというイメージでしょうか。

従来から、個人競技のプロスポーツは多くあったと思います。ゴルフ、ボウリング、テニス、相撲、そして競馬騎手などです。テストに合格したり、団体に所属したり、宣言をすることでプロ選手になっているようです。しかし、団体競技のプロスポーツ化というのは、野球を除きますと比較的最近の流れです。野球は19世紀に大学から始まりましたが、20世紀の最初に来日した米国のチーム自体がプロチームであり、早い時期から米国のプロリーグの影響を受けて“日本職業野球連盟”が設立されました。また、その時期はアマチュアリズムの強かったオリンピックの競技ではなかったことも事実です。

一方で、サッカーは欧州には19世紀からプロチームがあり、長い歴史があるのですが、膨大な予算の下に興隆してきたのは1980年代に入ってからです。ロサンゼルスオリンピック後に、各種スポーツの放映権料が高騰したことも背景にあります。日本は長く実業団チームの選手と学生で構成された代表チームが外国チームと戦ってきました。従って、アマチュアリズムの強かった時期のオリンピックでの活躍を例外として、競技力は決して高くありませんでした。ワールドカップに参加できたのは、1992年にJリーグが設立された後の、1998年フランスワールドカップからです。競技者人口が野球とそん色なく、700万人とも800万人とも言われるスポーツですので、選手そして観客の潜在的資源には恵まれており、Jリーグの誕生は必然だったのではないでしょうか。

ラグビーは、以前はアマチュア精神の権化のようなスポーツであり、犠牲的なプレイとチームワークが尊ばれる一方で、華美なプレイや得点後に歓喜を表すことに関しては否定的でした。また、アマチュア選手がラグビー以外の場面で目立つことに関しては受け付けられませんでした。1980年代に新日鉄釜石が7連覇をしていたころを思い出します。同志社大学を卒業して留学中の平尾選手が男性ファッション誌の広告に扱われたということで、協会から厳しく叱責されて日本代表をはずされたという記憶があります。平尾選手はその後日本に戻って神戸製鋼に所属して、日本代表として復活して活躍するのですが。

時代が下りますと、ラグビーもイングランドのプレミアシップが1987年に設立され、南半球でもニュージーランド・オーストラリア・南アでプロ化が進みスーパー12が1996年に始まりました。そして、アマチュア選手の集合体である日本代表チームは全く歯が立たなくなりました。1983年にウェールズに遠征した新日鉄釜石中心の日本代表は、強豪と24対29と互角の試合をしました。しかし、1987年のラグビーワールドカップ第1回から2011年の第7回大会まで、日本代表は1勝1分け18敗という成績だったのです。1勝はジンバブエからで、1分けはカナダ戦です。強豪国には大差で負けることが多く、1995年にはブルームフォンティーンの悪夢と呼ばれる試合で、オールブラックスに17対145で敗戦しました。しかも相手には控え選手が多く出場していました。

最近では、バスケットボールがJリーグの初代理事長である川渕氏のサポートを得て、大きく前進してBリーグを設立しました。地域に根差すこと。キャパシティのある競技場を持つこと。国際試合でも実績を積むために代表チームを強化することなど、まさしくJリーグの成功体験を後追いするような形式で進んでいます。野球やサッカーの少年が夢を持つのと同じレベルで夢が持てるようになり、非常に良いサイクルが回っているように見受けられます。

冒頭に、日本ラグビー協会の清宮副会長(早稲田実業から日本ハムに入団した野球選手の父親です)が日本でプロリーグを発足するアイデアを発表したことにふれました。本年9月から日本で開催されるワールドカップの機会を生かして盛り上げて、2021年のシーズンからプロリーグをスタートするということです。やはり、サッカーやバスケットボールのプロリーグと類似した概念です。地域のサポート・充分なキャパシティの競技場の準備・青少年の育成システムなどを条件にしてチームを募るようです。ついに、アマチュアリズムの権化のようだったラグビーが、プロリーグの結成に踏み込みます。先行したプロリーグ、つまりサッカーやバスケットボールの経験を参考にできることは大変なメリットです。一方で、サッカーやバスケットボールには700万人や500万人の競技人口がいますが、ラグビーは20万人以下です。試合への集客や放映権の交渉で経済的な基盤を築くことは、大きなチャレンジになります。しかし、ワールドカップを日本で開催する本年が、決断のタイミングであることは間違いないと思います。

ラグビーの実業団リーグは、長く製造業の企業に支えられてきました。また、冒頭に触れた鹿島アントラーズの母体は住友金属工業(現在の日本製鉄)でした。産業の趨勢とスポーツへの影響、競技の国際化の進展による変化の必然性、今後のスポーツマーケティングの重要性など、考えさせられることが多くありました。最後に、ストラタステクノロジーの製品は、強豪のプロサッカーチームのチケットシステムに利用されています。この団体スポーツのプロ化の流れの中でも、何か仕事ができないのか考えてしまうことは、仕事のプロですのでご容赦ください。

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