先日、日本経団連会長の中西氏の話しを聞く機会がありました。こう書きますと、経済団体の偉い方々が列席している場所を思い浮かべるかもしれませんが、実際にはメディア向けの記者会見です。外国特派員協会で20分ほどSociety 5.0について話し、質疑応答を実施するという場でした。

最初に感心したのは、内容よりも中西氏の英語での対応力です。今回は説明も、その後の記者との質疑応答もすべて英語でしていました。通訳が入らないので、時間を有効に使うことができますし、内容的にもあいまいさが省けている印象でした。

外国特派員協会の記者は日本のクラブの記者のようには忖度しませんので、答えにくい質問もストレートに聞いてきます。当日の朝日新聞に、日立製作所を含むグループ10社以上で技能実習法への違反があったことが報道されたこと。日産のゴーン前会長が長期にわたって拘留されており、人権問題として日本でビジネスをすることへの印象が悪くなりかねないこと。日本のエネルギー政策と原子力発電所に対する現在の考え。英国の欧州からの離脱問題に関して日本の経済界を代表してのコメント。これらのことに、良く分からないことや答えられないことには正直にその旨を伝え、答えられる部分に関しては当意即妙に答えていました。

実は英語で仕事をする際に、質疑応答時に適切にこたえる、あるいは当意即妙にこたえるというのは結構ハードルが高いことです。プレゼンテーションは事前に準備できますし、話す内容を原稿に落として事前に覚えてもかまいません。準備を十分にするかどうかで結果が左右されます。一方で、質疑応答を英語でするのは大変です。もちろん、想定のQ&Aを準備はしているでしょうが、記者が想定質問の範囲の中から聞いてくるとは限りません。今回は入っていませんが、外国特派員協会の会見では、よく逐次通訳がはいって会見をします。その場合は、通訳が話している間に考えをまとめることができるのですが、英語でそのまま質疑応答する際にはそうはいきません。

従いまして、プレゼンテーション時には中西さんは英語が結構上手だなという程度でしたが、質疑応答に入った段階でこれは大したもんだなと感心した次第です。中西さんはスタンフォード大学で修士を得ていますし、日立グローバルストレージテクノロジーズ社時代には、海外勤務の期間も長かったと聞いています。しかし、いわゆる帰国子女ではありません。小学校から大学まで、日本の公立学校を卒業した方です。従って、流暢な発音で話したり、英語を母国語としている人のような表現で話すわけではありません。しかし、日本の中学・高校・(予備校?)で英語を勉強したエンジニアやビジネスマンとしては、ここが良き到達点ではないかというような、通じる英語でした。こんな偉そうなことを書いていますと、おまえはどうなのだと言われそうですが、少なくとも中西氏のプレゼンテーションや記者との質疑応答内容は十分に理解できた程度ですとお答えします。

さて、Society 5.0についても少しお伝えしたいと考えます。これは、日本が提唱する未来社会のコンセプトです。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、新たな未来社会をSociety 5.0(ソサエティー5.0)として提唱しています

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)といった人類がこれまで歩んできた社会に次ぐ第5の新たな社会を、「Society 5.0」と名付けたようです。ディジタル革新、イノベーションを最大限活用して実現するという意味が込められています。3月14日、15日に経団連が主催するB20サミットで、幅広い政策課題について議論する際の土台となるコンセプトです。B20は共同提言を、6月に日本が議長国として初めて開催するG20大阪サミットに提出するようです。このB20を経団連が主催するということから、今回の外国特派員協会での記者会見に至ったようです。

さて、中西氏から聞いた話と、簡単な一枚のリーフレットで理解したことをベースにしてお伝えします。Society5.0はディジタルトランスフォーメーションにより、社会が変わることを前提にしています。多様なライフスタイルや個性のある幸福感が認められる想像的な社会を目指し、問題解決型から価値創造にシフトすること。地域的には集中化ではなく拡散の方向へ向かうこと、失敗を恐れず安心してチャレンジすることができること、自然と調和して環境を維持できる社会であることなどが記述されています。

そして、ここからが大事なのですが、具体的なアクションが記述されています。ビジネスセクターでは、大企業が組織として“出島(DEJIMA)”を作って、イノベーションを加速すること。人事慣行を変えて、終身雇用ではなく多様な就業環境と報酬制度を実現すること。さらには、人事上の平等主義を打ち破りトップタレントを厚遇することや、生涯教育を促進することも含まれています。公共セクターにおいては、ディジタル政府を実現すること。そして、財政力や政策決定力を中央政府から地方政府に移行するということをあげています。

私自身は話を聞いていて、納得した部分が多かったです。グローバルなビジネスを経験した中西氏らしい観点が、日本社会の課題に対しての取り組みに良く反映されていると思いました。その上で、情報通信事業を担当していた経歴も生かされています。

日本ストラタステクロジーも日本社会のディジタルトランスフォーメーションにEdge Computingのプレイヤーとして貢献したいという思いを強くしました。