「設備保全」とは、一般には聞きなれない言葉かもしれません。工場の生産技術部門が担当していることが多いのですが、生産ラインの生産性を維持・向上させるための取り組みをいいます。ここでは、設備保全の概要を簡単に説明し、どのような設備保全活動があるのかをご紹介します。

設備保全とは

設備保全とは何でしょうか? 設備保全の定義は「設備の性能を完全な状態に維持し、正常な生産に寄与するための活動」です。簡単にいってしまえば、生産設備の性能を維持して、故障や不具合のない製品を計画通りに生産するための活動のことです。

※設備保全分野の各用語はJIS Z8141(日本工業規格)に正確な定義があります。興味のある方は参照してください。

生産設備とは、生産活動を提供するための物的手段の総称です。ここには主として、機械、装置、工具や計器類、さらには土地や建物までも含まれます。逆に、「物的手段」なので、作業員のような「人」は含まれません。なお、設備保全は機械保全とも呼ばれますが、概念的にはほぼ同じです。

設備保全の内訳

設備保全は大きく分けて「維持活動」と「改善活動」があります。

維持活動とは、生産システムの設計時の性能をできるだけ維持するための活動です。通常「設備保全」といった場合にはこの「維持活動」を指す場合が多いです。

一方、改善活動は、性能が劣化した生産システムを修復・改善するための活動のことを指します。既存の装置を壊れにくいように改良・改造する「改良保全」と装置の設計段階で耐久性を重視した設計を行う「保全予防」の2種類があります。装置が高額で延命を図る場合や、改造・アップグレードを行う場合に相当します。

維持活動の内訳

維持活動には「予防保全」と「事後保全」があります。

予防保全は故障する前に保全することです。装置や生産ラインの状態を常に把握して故障になる前に手を打つことと考えればよいでしょう。あるいは故障の原因となる装置や生産ラインのクセをあらかじめ把握しておくことも予防保全に含まれます。

事後保全は、いわゆる「故障の修理」のことを指します。これは生産活動にとってはマイナスの影響を与えるものと考えてよいでしょう。故障は突然発生するので、故障してから保全(修理)を行うと何もわからない状態から故障の分析を行わなければなりません。これでは、装置や生産ラインの回復までに時間がかかり、生産性が大きく落ちてしまいます。このため、この事後保全をいかに少なくするかが現代の設備保全の優先テーマです。

予防保全の内訳

予防保全には「定期保全」と「予知保全」があります。通常この2つを組み合わせて設備保全を行っています。

定期保全は予防保全を時間基準で行う、いわゆる「定期的なメンテナンス」のことです。具体的には定期保全を行ったあと「設備管理台帳」に保守の内容を記録します。「設備管理台帳」への記入をしばらく続けていると、故障の原因となる装置や生産ラインのクセがわかってきます。これを利用すれば、トラブルの際にもすばやい対応が可能です。後述するように、この「設備管理台帳」を最大限に生かすためにも、専用のシステムを利用するとよいでしょう。

予知保全は装置の状態を常時モニタリングして、故障する前に故障の予兆を診断して保全します。定期保全の時間基準と異なり、保全を行う基準は装置の状態となります。この予知保全は、近年最新の技術によって急速に自動化・知能化が進んでいます。ここでは、人工知能やエッジコンピューティングも活用が試みられています。

予防保全や予知保全については、こちらの記事もご参照ください。
予防保全・予知保全とエッジコンピューティング|Stratus

その他の分類

ここまで見てきた保全の内訳のほかに、集中保全と部門保全という分け方もあります。

集中保全とは、設備保全業務のための専門の部署(生産技術部門が多い)を置き、集中して設備保全の活動を行うことです。高度な専門性が必要な保全業務を1つの部署に集中することによって、設備保全技術の維持向上に有効です。また、設備保全技術の継承にも役に立ちます。

部門保全とは、設備保全業務を設備の運用部門(製造部門が多い)が部署別に分散して実施する形態のことです。設備の運転部門(工場)は地理的に分散していることが多いので、地域保全ともいいます。

ちょっとしたトラブルならば製造部門が直してしまった方が早く、重大なトラブルでライン全体を止めなければならないような場合には、専門性の高い生産技術部門が対応しなければなりません。つまり、設備保全活動は、製造部門と生産技術部門の協力関係が重要になってくるのです。

設備総合効率とは?

設備総合効率とは、生産ラインの設計時に狙った生産効率(タクトタイムや稼働時間などで表される)からさまざまなロス(設備ロス)を差し引いた、現実の生産効率のことをいいます。

生産ラインを設計するときには生産効率を想定していますが、現実はそれよりも低い場合が多いです。設備保全の大きな目的のひとつは現実の生産効率を、設計時のレベルに近づけることが挙げられます。

設備ロスの内訳は「停止ロス」「性能ロス」「不良ロス」などがあります。

  • 停止ロス:故障停止、段取り・調整、工具交換、立ち上げ など
  • 性能ロス:空転、チョコ停、速度低下 など
  • 不良ロス:不良、手直し など

このうち、「チョコ停」とは、装置や生産ラインが一時的に停止することで、生産ラインの現場では問題になることが多いです。「ちょこっと停止」の略といわれています。装置や生産ラインのクセとして現れる場合もあります。装置や生産ラインの制御システムがオーバーフローしてしまったり、周囲の熱が上がりすぎて動作に異状が出てしまったりなどの原因が考えられますが、現実には根本的な原因がはっきりしないことが多いのです。

環境条件やタクトタイム、スピードなど、装置や生産ラインのメーカーが保証している条件ギリギリの状態で稼働している場合にも起こりやすいです。装置や生産ラインの電源を落として再度立ち上げると問題なく動作する場合もあれば、何もせず放置しておくと自動的に回復する場合もあります。

チョコ停が急に増えた場合は何か重大なトラブルの予兆ととらえて、警戒するのが基本ですが、原因を探ってもすぐには発見できないこともあります。そして、このようなトラブルが「チョコ停」かどうかを見極めるにも生産技術者の資質が重要になってきます。また、カメラで装置や生産ラインの常時監視を行って、チョコ停の傾向をセンシングするのも有効でしょう。

設備保全、特に予知保全の自動化

予知保全の知能化・自動化

予知保全の具体的・一般的な手法は装置にセンサーを取り付けておき、部品の状態を常時検出します。そして、検出結果に異常が出た場合に警告を出し、部品の交換を促します。このデータの収集・分析と、正常・異常の判断にはエッジコンピューティングを活用するのが有利とされています。特に、正常・異常の判断は、エッジサーバに乗せたエッジAIが有効と考えられています。より現場に近い位置で即時的な処理が可能なエッジコンピューティングの強みが生きるというわけです。

設備管理台帳の重要性とシステム化

先にも述べたように、設備管理台帳は保全活動終了後に、いつ故障したのか、故障の箇所、故障の原因、対応などを記録しておくものです。設備保全活動にとって大変重要な文書で、常に最新のバージョンが求められます。このバージョン管理などの文書管理は情報システムの得意分野なので、電子化しシステムで管理、関係部門間で情報共有できるようにしておきたいところです。

設備保全は地味に見えるものの、大変重要な活動

以上、設備保全についてご紹介しました。生産技術部門などの設備保全に携わっている人の活動は、知らない人からすると「工場の中で、何やらやっている」くらいに見えているかもしれません。しかし、設備保全は工場の生産性を高め、生産ラインを維持する大変重要な役割を担っているのです。

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