製造業に携わっている人であれば、「生産管理」や「品質管理」という言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。しかし、「製造管理」についてはどうでしょうか。この記事では、言葉の意味の違いを説明しながら、なぜ製造管理システムが重要なのか、さらに製造管理システムの重要性と活用することによるメリットについて見ていきます。

生産管理と製造管理の違い

  • 生産管理の定義
    よく聞く言葉ではありますが、生産管理とは何でしょうか? 最も一般的な定義は、
    「生産(設計・調達・作業)を品質・原価・数量および納期の観点で管理すること」
    と考えられます。また、これに加えて、受注・納品を加える場合もあります。つまり、生産活動にかかわるすべての工程について、コストの最適化や品質の維持などを目的として管理することです。
  • 「製造」と「生産」
    これに対して、製造管理の定義はそれほど明確ではありません。なぜかというと、「生産」と「製造」の概念が混同して使われることが多いからです。製造管理をあえて定義すれば、より製造現場に近い作業、部品の製造作業、組み立て作業、金属加工、製造ラインなどを管理するというイメージだと考えられます。いわば、生産管理の一部として、製造現場を管理するという意味で使われると考えられます。
  • 製造管理システムとは
    なお、製造管理システム(MES。製造実行システムともいいます。)は、製造ラインの制御システムから、製造ラインの稼働時間、製品の製造数、検品でチェックされた製品の数といったデータを蓄積、分析することで、稼働時間と製造数のバランスを見直したり、製造精度を高めるために行程の見直しを図ったりするなどの必要な措置をとったり、生産管理システムに必要なデータを送ったりするものです。いわば、製造管理を実行する情報システムといえます。

製造管理と品質管理の違い

  • 品質管理の目的と製造管理
    品質管理とは何でしょうか? これも定義があります。簡単に言ってしまえば、
    「買い手の要求に見合った製品を、経済的に生み出すための手段の体系」
    とのことです。つまり、製品の性能や品質(納期や数量も含まれます)を、顧客の要求に見合ったものにするための管理ということになります。品質管理の第一目的は、製品の品質維持です。現実には、コストを下げつつ品質を上げることが要求されることが多いので、製造管理と品質管理の概念は複雑に絡み合っています。したがって、明確な切り分けは難しいですが、製造管理の目的の1つに品質管理があるともいえるかもしれません。
  • 2種類の品質とデータ収集の必要性
    製造業における品質には、設計品質と製造品質の2つの種類があります。設計品質は狙った品質、製造品質は製品の最終的な品質となります。注意したいのは、設計品質以上の製品ができたとしても、品質管理が優れているとはいいません。あくまでも、ばらつきが少なく、狙った品質(設計品質)を実現できるのが優れた品質管理ということになります。そのためには、製品や仕掛品、寸法のようなデータを装置から、随時または適時に収集しなければなりません。また、それらのデータを分析し、現場で何が起こっているかを把握する必要があるのです。

製造管理システムの重要性とメリット

  • データ収集の自動化の必要性
    製品のデータを収集すること自体は、それほど難しいことではありません。しかし、生産ラインの規模が大きくなり、生産量が多くなると、全数検査というわけにはいかなくなります。そこで、抜き取り検査を行うわけですが、最近では、データ収集自体を自動化するというアプローチが増えています。
  • データ収集の自動化と製造管理システム
    たとえば、寸法の検査では、製造装置自体にカメラを取り付け、画像処理を行えば、製品の寸法を取得することができます。データさえ取得してしまえば、このデータを基にして製造管理もしくは品質管理に必要な分析を、抜き取り検査よりも正確に行うことができます。先ほど述べた製造管理システム(MES)は、これらのデータ収集から分析までを一貫して行うシステムになっているのです。
  • 製造管理システムとエッジコンピューティング
    製品のデータが異常値の場合、製造装置側の不具合であることが多いです。たとえば、対象物を削る切削加工という工程では、切削工具の摩耗によって、加工した製品の寸法に狂いが生じます。また、切削工具が破損していれば、製品の加工面や表面に傷ができます。昔ながらの切削加工では、熟練の現場技能者が摩耗や破損の発生を予測して、適時に工具を交換していました。これに対して、現在の切削加工機では、作業が自動化されており、工具の摩耗や破損を自動的に検出する機能があります。しかし、工具の摩耗や破損を示す製品データが検出されたら、直ちに工具を交換する動作に入らなければなりません。その場合、必要とされるスピードは、ミリ秒(1,000分の1秒)の単位であることが多く、クラウドサーバが直接データの取得や動作の制御を行うのは、スピードの点で現実的ではありません。そして、データの取得の時間的な間隔はやはりミリ秒単位のことが多く、また、製造装置の稼働中は常時行われることから大量のデータが発生します。これらの大量のデータ処理をリアルタイムに近いスピードで行うのは、クラウドサーバだけではやはり現実的ではありません。また、何らかの手段で競合企業のシステムセキュリティを破り、製品データを入手して解析すれば、競合の工場の生産能力や、歩留まりなどがわかってしまいます。そのため、大量の製品データを一か所のクラウドサーバで集中管理するのはセキュリティの面で得策ではない場合もあるでしょう。

    このような場合、MESの一部、あるいはMES全部をエッジコンピューティングで実現することもできます。つまり、エッジコンピューティングを導入して、データ取得・蓄積・分析はエッジサーバで行うことも可能ということです。そして、結果だけをクラウドに上げれば、リアルタイムに近いスピードを維持しながら、ネットワークに流れるデータを最小限にすることができます。これによって、データ収集・分析の自動化と、処理のスピード、セキュリティの両立を図ることが可能なのです。

  • データ収集の自動化と人手不足
    データ収集・分析の自動化は、近年の人手不足からの要請でもあります。MESに対応する部署として、生産管理部門や、生産技術部門などがあります。これらの部署では、従来、熟練技術者の長年の勘によって製造ラインを維持してきましたが、残念ながらこうした技術者の数は減ってきています。そこで、熟練技術者が判断するのに必要なデータ収集を自動化し、分析も自動化すれば、技術者は意思決定に専念することができるのです。

製造管理システムはメリットが大きい

製造管理、生産管理、品質管理の違いと、製造管理システムのメリットを説明しました。「製造管理」という言葉は、比較的最近使われるようになった言葉で、明確な定義がまだありません。これらの言葉を使うときは「生産」と「製造」の違いを意識して使うとうまく説明できるでしょう。また、製造管理システムは、メリットが大きいのですが、当然、ある程度の初期費用がかかります。コストとメリットを考えながら導入を考えてはいかがでしょうか。

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