理工系の分野を学んだ人なら一度は「制御」という言葉を聞いたことあるはずです。特に「自動制御」は理工系の分野はよく使われています。制御の分野は、それだけで専門書が一冊書けてしまうほど奥が深いですものですが、今回は簡単に「制御とは何か?」について見てみましょう。自動制御と手動制御の違い、フィードバック制御とフィードフォワード制御との違い、そして、近年盛んになっている人工知能やエッジコンピューティングとの関わり合いについて取り上げます。

制御とは? 自動制御と手動制御

制御の定義とは何でしょうか? 「制御」とは、「目的の状態にするためにシステムに対して操作・調整をすること」と定義されます。つまり、システムを目的の状態にするため、または、システムの状態を維持するために、そのシステムに対して働きかけを行うことです。

「制御」は大きく分けて2つに分かれます。「手動制御」と「自動制御」です。手動制御は、システムに対する働きかけを人間が行うこと。つまり、「システムに対して行う操作・調整を人間が介在して行うこと」と定義されます。たとえば、寒くて焚火をたいていて、火が小さいので暖かくならない場合、薪の量を増やして火を大きくするのが「制御」なのです。このような場合、焚火という「暖房システム」に対して、人間が「火の大きさ」を目標量として「薪の量」という制御量を調節して焚火の大きさを制御していると考えることができます。

これに対して、自動制御はシステムに対する働きかけを自動で行うことです。つまり、「システムに対して行う操作・調整を人間が介在しないで行うこと」と定義されます。たとえば、暑くてエアコンを入れる場合、人間は温度の設定のみを行います。そして、その温度になるように、あるいはその温度を維持するようにエアコンが自動的に温度を調整します。このような場合、エアコンという「冷房システム」は設定された温度を目標量、冷媒の循環量を制御量として、自動的に温度を制御していると考えることができます。

古典的な制御方式、フィードバック制御とフィードフォワード制御

上記のエアコンの例では、設定された目標量に対して、冷媒の循環量を制御量として制御しています。すなわち、現在の量(室温)をセンサーで計測し、目標量(設定された室温)と比較して制御量(冷媒の循環量)を決定しています。そして、これを繰り返すことで、少しずつ現在の量を目標量に近づけています。つまり、現在の量と目的量とを比較してその差分を現在の量に加えることで、現在の量を目的量に近づけていく制御方式をとっているのです。このような制御方式をフィードバック制御と呼びます。差分を現在の量にフィードバック(帰還)して加えていくためです。

フィードバック制御は、非常に一般的で広く使われている制御方式です。しかし、原理的に、現在の量が目的量に達するまでに遅れが生じるという欠点があります。たとえば、お風呂の設定温度に達するまでに時間がかかることや、エアコンの温度が安定するまでに時間がかかることなどです。

これに対して、フィードフォワード制御というものがあります。フィードフォワード制御は、システムに外乱があった場合や、必要な制御量があらかじめ予測できる場合に、その外乱発生と制御量を予測し、それに対応した制御量を加えていく制御方式です。フィードバック制御に付け加えて使用されることが多くあります。たとえば、フィードフォワード制御によって大まかな制御量を決定し、細かな微調整にはフィードバック制御を用いることが考えられます。また、制御量を予測することから、人工知能が使われる場合もあります。

具体的な例としては、お風呂の現在の温度を計測して制御量との比較を行うのではなく、あらかじめ予測しておいて、それに見合った制御量を出力することが考えられます。これによって設定温度に達する時間を短くできるのです。

自動制御と人工知能

最近のエアコンやお風呂などのなかには、「おまかせボタン」を押すと、最適な温度が自動的に設定されるものがあります。このような制御は、古典的なフィードバック制御やフィードフォワード制御だけでは実現不可能なものです。最適な温度を決定するためには、複数の要因を同時に収集して、制御量を決めることが求められるからです。たとえば、お風呂の湯温の設定では、お風呂の温度だけでなく、天候や気温、湿度などの要因を収集して総合的な判断を行い、お風呂の制御量を決めることが求められます。

また、最近普及が進んでいる家庭用燃料電池を使用している場合には、湯温に加えて発電量やタンクの残量などを考慮しながら、最適な制御量を決定する必要があります。そのため、従来の湯沸かし器よりも考慮しなければならない要因が多いのです。そして、考慮しなければならない要因は、新しい技術になればなるほど増える傾向にあります。そのようななかで、目標値に対する制御だけでなくシステム全体に対する「最適」な制御を行う必要が出てきているのです。

このような「最適」制御の要求に対する答えとして、最近では人工知能、具体的にはニューラルネットワークによる深層学習を導入して総合的な判断を行うことが多くなっています。ニューラルネットワークは、複数の要因を同時に総合的に判断して、制御量を決定できます。また、近年のハードウェア・ソフトウェアの驚異的な発達によってスピードの点でも明るい展望が開けています。学習が必要ではあるものの、多数の要因に対して最適な制御量を決定できるメリットは、大きいものがあります。今までのフィードバック制御やフィードフォワード制御を補完する技術として、これからの制御技術になくてはならないものとなっていくでしょう。

自動制御とエッジコンピューティング

上記の例では、あまり制御スピードの要求されないエアコンや湯沸し器の例を挙げましたが、こうした例であってもやはり、制御スピードは速い方が良いといえるでしょう。それでは、他の分野ではどうでしょうか? 特に産業システムや自動車の分野では、より制御にスピードが要求されます。自動車のエンジン制御を例にとると、数ミリ秒の単位で制御が行われます。同様に生産システムにおいても、制御システムにスピードが求められます。クラウドコンピューティングの登場以来、さまざまな産業分野でクラウドの活用は進んでいますが、ネックになるのはそのスピードです。先にも挙げたような制御システムをクラウドコンピューティングだけで実現するのは、スピードの点で容易なことではありません。そこで、クラウドコンピューティングに対してスピードの点で有利なエッジコンピューティングが有効と考えられるのです。

自動制御のこれから

自動制御は、18世紀の終わりごろには機械的に実現されていたといわれる、実は非常に歴史の長い分野です。昔はこれらの自動制御をアナログ的に実現していました。古典的な制御方式はこのアナログ時代に確立されたものなのです。現在はこれをデジタル化して使用していますが、これからは人工知能がそれを補完するような形になっていくでしょう。新しい技術を取り入れ少しずつ形を変えてきた自動制御は、人工知能やエッジコンピューティングといった技術によって今でもアップデートされ続けているのです。

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